国家公務員共済組合連合会 舞鶴共済病院
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前立腺肥大症

前立腺肥大症とは

1. 前立腺肥大症の症状には、排尿障害だけでなく、尿意切迫感などの刺激症状を伴う事も多い。
2.感冒薬やお酒などで排尿障害が悪化し、尿閉に陥ることがあります。


前立腺肥大症って…?


前立腺は精液の一部の液を作る、生殖器の臓器で、膀胱の出口に尿道を囲むように存在します。前立腺は尿道に近い部分にある内腺とその周囲の精液の一部を作る外腺よりできています。このうち内腺部分に結節ができ始めます。この結節が大きくなり前立腺の組織が腫大することを前立腺の肥大と言います。
前立腺の肥大があっても、必ずしも自覚症状がでる訳ではありません。前立腺が腫大することで尿が出にくいなどの症状がでる病気を「前立腺肥大症」と言います。

前立腺肥大症とは

前立腺肥大症の症状

前立腺肥大症の症状には、主に排尿障害があり、それに付随して様々な排尿に関する症状が出現します。前立腺肥大の症状は、次の3つの時期に分かれます。

第1期  刺激期(刺激症状)

頻尿(特に夜間),排尿困難,尿意切迫感などといった症状が刺激症状にあたります。これは、肥大した前立腺が尿道や膀胱を圧迫し刺激するために生じます。特に夜間の頻尿は前立腺肥大症の初期の症状として、比較的よく認めます。

第2期 残尿発生期(閉塞症状)

頻尿,排尿困難,尿意切迫感の増強,残尿感,切迫性尿失禁などいった症状が閉塞症状にあたります。これは肥大した前立腺のため尿道が左右より圧迫され細くなっているために生じます。ひどくなってくると、排尿しても尿を膀胱から出し切ることが出来なくなり、残尿が出現します。

第3期 慢性尿閉期(尿閉)

さらに症状が進むと尿が全くでなくなります。徐々に出なくなる人もいますが、風邪薬の内服・飲酒、便秘などをきっかけに突然でなくなる人もいます。尿が出なくなり、膀胱に尿が大量に貯留し、下腹部が張り、非常に苦しい状態です。このような状態の時はすぐに病院を受診する必要があります。

前立腺肥大症の診断と評価

前立腺肥大症の診断と治療指針としては、『前立腺肥大症診療ガイドライン』1)が作成され、広く臨床で活用されています。患者さんと医師が前立腺肥大症の最も効果的な診断法と最も適切な治療法を選択するための指針を提供することを目的としたものです。
現時点での前立腺肥大症の標準的な診断・治療の流れは図のようになります。

標準的な診断・治療の流れ

前立腺肥大症の症状を判定するために“国際前立腺症状スコア” と呼ばれる問診表を用いて重症度判定を行います2)。


<国際前立腺症状スコア:IPSS>

<国際前立腺症状スコア:IPSS>

この点数だけで評価がはできる訳ではありませんが、上記の合計点数が7点以上であれば前立腺肥大症の可能性が出てきます。診断のためには、排尿障害の程度、前立腺の大きさ、前立腺癌との区別が必要になります。前立腺肥大症が疑われるときは下記のような検査を必要に応じて行います。


直腸診:肛門から指をいれて直腸の壁越しに前立腺を診察する方法です。直腸診は非常に簡単な検査で、固さや大きさから、前立腺肥大症の程度や前立腺がんとの鑑別などを行います。


超音波検査:前立腺のエコーでは、下腹部からあてて観察を行う方法と、肛門から細い超音波発生装置(プローブ)を挿入し直腸内から観察する方法の2種類あります。前立腺の詳しい情報を得るには経直腸的超音波検査を行います。


尿流量測定(ウロフローメトリ):排尿状態を客観的に評価する方法として、尿の流量測定が有用です。この検査は、機械に接続されている特殊な便器にむかって排尿するという非常に簡単な検査です。その際の、排尿時間や、排尿の勢いを測定しグラフ化することで排尿状態を非常によく把握することができます。


残尿測定:排尿直後に膀胱内にどれくらい尿が残っているかを調べます。排尿後すぐに超音波検査(エコー)を行うことで簡単に測定でき、蓄尿・排尿の状態を評価することができます。正常ではほぼ0mLですが、残尿量50mL未満が許容範囲とされます。


前立腺肥大症の治療

症状も軽度で、上記の検査でも程度がひどくないと思われるものついては経過観察のみを行う場合もあります3)。逆に、比較的症状が強い場合、排尿状態があまり良くない場合には薬物治療、手術といった治療が必要となります。

薬物療法

薬物治療は前立腺の肥大を治すといった治療ではなく、症状を和らげてやるという対症療法にあたります。


■α受容体遮断薬
この薬は、前立腺や尿道の筋肉をリラックスさせることにより、尿が出にくいといった前立腺肥大症の諸症状を改善します。副作用としては、めまいやふらつきなど、低血圧に伴う症状が現れる場合があります。


■5α還元酵素阻害剤
この薬は肥大した前立腺を小さくすることで、尿を出やすくする薬剤です。すぐに効果がでる訳ではなく数ヶ月かけて前立腺を小さくしていきます。従来の抗アンドロゲン剤に比較して、副作用が少ない薬剤です。


薬物療法によって症状は改善しますが、肥大症の進行を完全に止める訳ではありません。知らない間に進行して尿閉になったり、膀胱機能が障害されたりすることもあるので、「尿意が強いのに尿が出せない」と訴えた場合は、尿閉のため腹部膨満などがないか確認する必要があります。一過性の排尿障害であれば、導尿を行うことで次回からの自己排尿が可能となる場合もありますが、尿閉を繰り返す場合は、膀胱留置カテーテルや間欠導尿を行う必要があり、カテーテルの管理や自己導尿の指導を行います。


薬物治療では、症状の改善が望めない場合には、手術による治療が必要となります。


手術療法

当院では標準術式のTUR-Pとレーザー核出術(Holep手術)も導入しています。前立腺肥大症の手術は、様々な新しい機器による手術が導入されていますが、それでも50gを超える大きな前立腺には出血量も多く困難で、以前は開腹手術が行われていましたが、そのような症例にもHolep手術は比較的安全に手術が可能となり、合併症も少なく成績も良好です。


TUR-P(経尿道的前立腺切除術)
ループ状の電気メスを装着した内視鏡を尿道内に挿入し、患部をテレビモニターで見ながら、肥大した前立腺組織を尿道粘膜とともに切り取る手術です。前立腺肥大症に対する手術的治療法のなかで、経尿道的前立腺切除術(TUR-P)は現在の標準的手術法となっています。

TUR-P(経尿道的前立腺切除術)

HoLEP(ホーレップ)
内視鏡を尿道から前立腺に通し、レーザーファイバーと呼ばれる機器を前立腺の内側(内腺)と外側(外腺)の境目に挿入して行います。ホルミウム・ヤグレーザーという種類のレーザー光を照射し、肥大した内腺(腺腫)を外腺から切り離します(核出)。核出され膀胱内に移動した腺腫を別の機器で細切・吸引して摘出します。

TUR-P(経尿道的前立腺切除術)

関連施設

すこやかの森は、家庭や地域との結びつきを大切に、介護を必要とする高齢者の自立を支援し、家庭復帰を目指す施設です。

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